6号 2000年4月20日
沖縄県感染症サーベイランス担当 真栄田 篤彦

 沖縄県内で、一昨年8月から昨年9月までの1年間に渡って麻疹(はしか)が流行しました。幼い子ども達が麻疹(はしか)に伴う合併症の急性脳症や麻疹肺炎等で亡くなったことは皆様もご記憶に新しいことと思います。

 今回の沖縄県内の麻疹罹患数は全国の報告数の実に約20%(沖縄県2,034人、全国10,617人)を占めており、いかに沖縄県が他府県に比べて麻疹流行がすごかったか認識できます。麻疹(はしか)で入院した患者の約70%は2歳未満の乳幼児で、そのほとんどは予防接種を受けておらず、死亡者は8名でした。

 麻疹(はしか)は予防接種の効果がはっきりしており、地域における予防接種率が95%以上であれば流行は阻止できると言われています。沖縄県内の麻疹(はしか)の予防接種率は約62%と低く、大流行の素地は今年も同じです。

 県内を市町村別ににみると麻疹(はしか)の予防接種率に格差が見られます(30%から100%)。予防接種の実施主体は各市町村になっていますが、市町村の取り組み方によって接種率の格差が生じることは決して許されるものではありません。これからますます少子高齢化社会へと移行する時代にあって、市町村の予防接種行政の差によって生じる不公平が起きてはいけません。沖縄県民の子ども達はおしなべて等しく公平に健康を維持するための権利を有しています。

 那覇市では麻疹(はしか)の予防接種が無料になり、年間を通していつでも個別接種できるようになってから飛躍的に接種率が高くなりました(84.5%)。その他の市町村では医師のマンパワー不足や予算不足等により、やむを得ず集団予防接種体制を取っているところもまだあります。しかし、市町村の行政の壁を撤廃し、被接種者が沖縄県内の「どこでも、いつでも無料で予防接種が受けられる」制度が構築されるのなら、県内の麻疹(はしか)予防接種率の向上とともに麻疹(はしか)撲滅が近い将来に達成されるものと思います。市町村に存在する予防接種行政の障壁を1日でも早く撤廃できるよう希望します。

 予防接種の実施に際しては、麻疹(はしか)ワクチンの反応を極力なくするよう製薬会社への要望はもちろんのこと、接種する医療サイドにも予防接種に伴う健康被害が発生しないように充分に気をつけながら接種事業に協力していきます。

 当面の対策としては1歳になったら早めに麻疹(はしか)の予防接種を受けて、県内の麻疹予防接種率が95%に達するよう「市町村・各医師会・被接種児を持つ地域住民」の連携をとり、沖縄県内での麻疹(はしか)撲滅を達成できるよう努力していきます。