2008年6月
NPO法人こども医療支援わらびの会理事長 真栄田篤彦

 去る5月30日に南部医療センター・子ども医療センター近くのファミリーハウス「がじゅまるの家」でオープニングセレモニーがありました。感涙しました。こども医療センターすぐ近くで、同センター小児病室から見えるところに入院した患児の親御さん達のための宿泊施設がスタートしたのです。離島・遠隔地からの家族が利用できる施設で、入院室で辛く苦しい病状にある患児にとっても心強い施設です。

これまで沖縄県から県外での治療を余儀なく受けてきた辛く苦しい時期がありました。高度な医療を受けるために、はるか遠い東京・大阪・福岡等の他府県の医療施設まで海を越えて受診治療してきました。そして患児と共に家族も付き添いの闘病生活で、多大な経済的負担や精神的苦痛を強いられ、それに耐えきれずに破綻した家族や、重症のまま命を失ってしまった子どもたちの悲劇がありました。

このような辛い経験をしてきた様々な重度の疾患を持つ家族の会が集まって、県内にも母子総合センターのような高度医療のできる病院の設立を求めてきました。私達の前身母体である「母子総合センター設立推進協議会」が10年近く市民運動を展開して、県民から約20万人の貴重な署名を集めて県を動かすことができました。そして、平成18年4月に稲嶺惠一前知事のときに「南部医療センター・子ども医療センター」が完成したのです。

元病院管理局長の新田宗一氏や元福祉保健部長の稲福恭雄氏、同じく元部長の新垣幸子氏、同喜友名朝春氏、更には嘉数昇明前副知事、そして伊波輝美部長と多くの県庁スタッフとの真摯な協議の末に同センターが完成したのです。県は私達外部の意見を尊重し、患者家族の声として評価していただき、病院の細部にまで意見を通して頂きました。これまで関わった全ての県庁スタッフの皆様方に心より感謝申し上げます。

さて、病院の次は当県の地理的に不利な離島・遠距離からの同センターに入院する患者家族のための宿泊施設の設立の運動を展開してきました。そして、幾つかの企業に打診してきましたが、平成18年7月当時沖縄電力副社長石嶺伝一郎氏からの提案で、当時社長の當眞嗣吉氏の了解のもとで最終的には沖縄電力の百添会創立10周年記念事業として1億5千万円でファミリーハウス建設を引き受けて頂きました。宿泊利用者の立場として私達の意見を設計に反映して工事は順調に進み、やっとの思いでファミリーハウスが完成したのです。内部の備品に関しては、許田商会、石川文明堂、株)大川家具のご好意で寄付を頂き感謝申し上げます。

なお、ハウスの運営に関しては、仲里全輝副知事の指導の結果、財)沖縄県保健医療福祉事業団が今後運営することに決定、実務委託運営として私達「NPO法人こども医療支援わらびの会」が携わることになりました。「がじゅまるの家」は県民の患者家族が安心してまた精神的な安らぎを得る「第2の我が家」としてご利用頂けることを期待してやみません。「がじゅまるの家」に対して県民の今後のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

2008年5月31日 琉球新報 論壇掲載