1999年11月18日
沖縄県医師会学校保健担当理事 真栄田 篤彦
第49回全国学校保健研究大会 発表 (開催地 岐阜市)

子どもたちの「こころの問題」や、子どもたちが切れる等の「学級崩壊」は、全国的な問題となってきている。これらの問題は、学校現場や教育方針のほかに、家庭や、地域環境にも起因している。

学校医のあらたなる役割

自立性・協調性に乏しい、いわゆる社会適応性の少ない子どもたちを早期に見つけ出し、「こころの問題」や「学級崩壊」になる前に対処できるような役割を果たす必要がある。

学校現場、地域社会、保護者、学校医で連携をとり、子どもたちが「異常」と解釈される前に、健康で正しい方向へ導いていきたい。

子供たちのスポーツや文化サークルへの参加

子どもたちの心の成長には、地域での豊かな体験が不可欠といわれている。放課後の時間に、子どもたちがスポーツや文化サークル (町内の野球クラブ、サッカークラブ、柔道、剣道、舞踊、書道、伝統芸能・伝統武道等) へ参加できるルートを各地域に構築することを提案したい。

サークルでは、ひとりひとりが充分に理解され、仲間として迎え入れられ、そして家族的な絆が育まれるような、暖かい環境をこころがける。 サークルで、子どもから大人まで一緒に行動したり、指導を受ける過程で、子どもたちのたくましく生きる力を育んでいけるものと思う。

子どもたちが特技として自信をつけ、学級でも自慢できるようになれば、輪がさらに広がる可能性もある。

ただし、スポーツ障害をきたす程のハードトレーニングや、単に勝利を目的とした指導は避けるべきである。子どもたちが心豊な感性を育めるような実体験を継続できる方法を模索し、指導すべきである。

サークル指導者、保護者、学校医、学校関係者らが、よく連絡をとりあうことも大事である。

幼児をもつ親と学校医

「こころの問題」は、子どもを取り巻く関係障害を、親子のレベル、家族レベル、社会レベルなど、諸々のレベルからアプローチして解決していく必要がある。

今日では、乳幼児期からの関係障害がこころの問題に影響するといわれている。乳幼児の早期から対応する必要性が唱えられている。

幼児期は発達に伴い理解力が増大するので、しつけの時期でもある。学校医、園医は日常診療の際にも、親と子の信頼関係の正しい構築ができるように、親への適切な助言をするべきと考える。

「こころの問題」ネットワーク

小学校低学年の早期から「こころの問題」や「学級崩壊」等の予防を講ずるべきである。思春期の「炎が燃えさかる」エネルギーの爆発寸前になってからの対応では遅すぎる。

将来の日本を支えてくれる子どもたちを「こころの問題」ネットワークで支援する必要性がある。那覇医師会式の提言が機能するためには、サークルへ参加する子どもたちの保護者の理解、サークル参加費用の軽減措置、学校医・学校現場・サークル指導者たちの子どもへの温かい愛情と協力が必要である。