2003年11月
真栄田 篤彦

 近年、学校現場では様々な問題が山積している。もはや学校現場だけで解決できるものではない状況である。 このような中、文部科学省では「児童生徒自ら健康課題を見つけ、自ら学び自ら考え主体的に行動できるよう、心豊かで生きる力を育む健康教育」の推進をしている。

 今日の児童生徒の問題は、いじめ、不登校、性の逸脱行動、薬物乱用、児童喫煙、生活習慣病など、多様化している。また、暴力犯罪の悪質化・低年齢化等の問題はかなり深刻である。法律改正で刑事処分の対象年齢は14歳に引き下げられた。

学校保健委員会の役割

 このような問題の解決は、学校現場だけでは困難である。学校関係者、学校保健に携わる保護者、地域保健関係者、学校医らが集まり、学校健康教育の検討を行う学校保健委員会の役割は重要である。

 学校保健委員会の設置率は都道府県ごとに温度差がかなりある。しかしその重要性が認識されつつあり、設置率も上昇してきている。

 学校保健委員会の運営主体を養護教諭に任せていることが多い。重要な問題を提起するには、学校医の企画参加も必要である。

 児童・生徒の問題は、学級担任だけで解決するのではなく、早期に学校全体の問題として取り組む必要がある。もちろん、児童・生徒達からの暗黙の訴えを未然に察知できるように、教諭と生徒間の信頼関係構築は重要である。

 学校全体の共通問題として取り組むと、学校管理者が早急に問題提起できる、ほかの教諭達に周知徹底できる利点がある。 その際、保護者、地域保健関係者、学校医等にも早期に呼びかけ、学校保健委員会での検討会を開催することも必要であろう。 できることなら委員会の開催は毎学期ごとが望ましい。

地域社会の連携

 現代は核家族化や、各家庭間の孤立化などお互いの交流が希薄化している。核家族での育児や躾は、思考錯誤をしながら行われていることが多い。 2~3世代同居家庭での育児・躾との違いがうかがわれる。核家族化や、家庭間の孤立化などの障壁をなくすような地域の緊密な連携が必要である。

 地域の緊密な連携とはどのように構築していけばよいのか。 自治会に任せていた地域活動を一歩踏み込む必要がある。 子ども会・青年会・老人会の組織を充実化したり、これら組織間のつながりをよくするシステムを検討してもらいたい。 高齢者に対するソーシャルワーカーのような、地域内の各組織間との連携をとるためのコーディネーターの存在も必要であろう。

学校医とスクールカウンセラー

 児童・生徒の心の問題を、家庭内だけで解決することは非常に困難である。家庭・学校・地域全体で取り組む必要がある。

 スクールカウンセラー、学校医のかかわりは重要である。該当児童・生徒の心の問題で医学的な判断を必要する場合もある。不登校、閉じこもりには、児童精神専門の精神科医の協力が必要である。学校、スクールカウンセラー、学校医らが、早期から緊密に連携するように、システムを構築しておくべきである。

学校と地域社会

 学校内に「家庭教育支援会議」等を設置して、地域の果たすべき役割を検討しておく必要がある。文部科学省は近々、問題児童・生徒に対するコーディネーターを各県ごとに設置する。また、各自治会の連携をとるためのコーディネーターの存在も必要である。

 地域社会の連携のためには、必要な情報のすばやい共有化が必要である。インターネット上で、学校・地域社会・学校医のメーリングリストを作成したり、日々の連携のためのネットワークを立ち上げる必要がある。

 もちろん個人のプライバシー保護には最大限配慮する。各組織間で児童・生徒の問題提起をできるように、協議会を設置し、担当者を常設する。そして将来を担えるような児童・生徒の健康教育に関与していく必要性がある。